m_moriabc m _altieri 対話

太郎ちゃんという、とてもピュアな子がいた。
幼少の頃の私の家裏に住む三つ下の子だった。
太郎ちゃんは朝学校に行く途中に様々な出来事に遭遇する。
夏は蟻の行進、冬は水たまりが固まった氷。
行進の行く先を見届けて、氷は全部粉々に踏み砕かないと気が済まない様子だ。
万事そんな調子なので、いつまでたっても学校に辿りつかず、夕方に登校というのも日常茶飯事だった。
そんな太郎ちゃんを見て、私は母に呆れながら面白おかしく彼の話しをしていた。
母は笑いながらも真剣に一言こういった。
太郎ちゃんは大物になるかもねぇ、と。

マウリッツオは、そんな人だ。
歩いては立ち止り、自然の言霊に耳をすませている。凍てつくような夜、誰もが足速に帰路につくそばで暗闇にあるなにかをじっと見つめている。行動は本能と興味が赴くままに蛇行し周りを巻き込みながら果てしなく寄り道していく。
この世界での一応決まりごとになっている時間の概念というものから、どんどんどんどんはみだしていく。

しかし、と思う。
眼が脚が目的地へ向かうだけのものになっていないだろうか?
それだけなら人生はなんと虚しい事だろう。
この世界に存在する光、音、匂い、漂う気配を足を止めて感じてみる。感性の窓を全開にしてみよう。
歩く、ということがどんなに素晴らしいことなのか。
彼と一緒に過ごしたこの数日で、私の中のなにかが目覚めた気がしている。

Text : Kenichi Nakamura

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